北極海の安全航行のための運航実務書

摘要

近年，夏の北極海の氷の減少に伴い，北極海を商業利用する船舶が増加している.北極海は夏でも氷が存在する可能性があるため，現在，船員の多くは北極海沿岸国の出身者や冬期バルト海等において氷海航行経験を積hだ者が占めている.こうした中，これまで氷海航行経験がほとhどない我が国商船隊の船員に対し，当該経験を補うに等しい知識·技術の普及が喫緊の課題となっている.日本海難防止協会は専門委員会を組織し，北極海航路の安全航行のための運航実務について基礎的な調查検討を行い，その結果を運航実務書「北極海航路ハンドブック」として取りまとめる事業を実施した（2014～2016年度).同書は北極海航路の航海·操船·機関運用·通信·労働安全·緊急時対応等に必要な知識や注意事項やテクニック等を取りまとめたもので，我が国の北極研究者及び海事関係者らによる助言等に加え，氷海航行経験を有する数少ない日本人の知見等も反映されている.本稿は同ハンドブックの概要について解説する.