慢性心不全の現状と課題

摘要

慢性心不全は，「慢性の心筋障害により心 臓のポンプ機能が低下し，末梢主要臓器の酸 素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にま た相対的に拍出できない状態であり，肺，体 静脈系または両系にうつ血を来し日常生活に 障害を生じた病態」と定義される.わが国における死因別死亡総数の順位では，心疾患によ.る死亡は29%で，悪性新生物 (30%)に次いで二番目に多い.中でも，心不 全による死亡は心疾患の内訳の中では最も死 亡数が多い疾患である.心不全は，心筋梗塞 や高血圧など，さまざまな疾患が原因となる心臓疾患の終末像であり，その予後は不良で ある.急性期医療の充実や技術の向上，さま ざまなデバイスの発達により急性期循環器疾 患救命率の向上が得られてきたが，それとと もに，慢性心不全入院数は増加の一途をたど り，今後さらに増加の程度は急激に加速する.