熱とスピン流

摘要

近年，電子のスピン自由度を積極的に活用する電子技術（スピントロニクス）への熱の効果が大きな注目を集めている．その背景には，熱によってスピンを操作して新しいスピントロニクス機能生み出せないかという大きな期待が存在しており，スピンカロリトロニクスと呼ばれる一分野を形成しつつある．スピンカロリトロニクスに関する最近の研究の傾向として，伝導電子によって運ばれる．スピン流（伝導電子スピン流）の研究とは別に，局在磁化の集団励起であるスピン波の運ぶスピン流（スピン波スピン流）という新しいスピン流に関する研究が盛hに行われている．これは，スピン波の研究がこれまでスピントロニクスという観点から行われてこなかったという事情もあるが，それに加えて，スピン波スピン流が伝導電子スピン流に比べて遥かに遠くまでスピン情報を伝達出来るという特性をもっているからでもある．ここではスピン波による一方向性の熱輸送現象，及びスピン波を媒介とする熱駆動スピン流生成現象（スピンゼーペック効果）を取りあげ，簡単な解説を加えたい．