車輪とレールのメカニクス：車輪／レール摩擦緩和システム実用化への取組み

摘要

車輪／レールの接触問題は，安全性，経済性および環境問題にかかわる鉄道固有の課題の一つである．特に鉄道車両が急曲線走行時に発生する横圧は，乗り上がり脱線の主な要因の一つであるばかりでなく，レール及び車輪の材料保全の面ではレールの側摩耗や車輪のフランジ直立摩耗，曲線内側レール（以下「内軌」，また曲線外側レールを「外軌」と表記する）頭頂面に発生する波状摩耗の主な原因の一つでもある．また，環境面では内外軌のきしり音の主な原因である．このような背景の下，横圧を適度に抑制するために車輪とレール間の摩擦を制御することが注目され，国内外で摩擦調整剤の開発が進められている．本稿では，鉄道総研が開発した車輪踏面と曲線内軌頭頂面間に用いる「摩擦緩和材」とこれを効率よく車輪とレール間に供給する「摩擦緩和材噴射装置」からなる「車輪／レール摩擦緩和システム」の実用化に向けた取組みについて紹介する．