片ブレーキ誤操作防止装置と手こぎ時の緊急即時停止装置: 農機の安全装置の開発と普及状況

摘要

JA共済連では，平成25年から平成28年の間に発生し，共済金が支払われた死傷事故を対象に，農業機械に関連した事故の分析結果を公表している（JA共済連，2018）。この分析結果の中で，農研機構が実施してきた安全鑑定（現在，内容を強化·拡充した安全性検査に移行）の受験実績がある農業機械の種別に絞ると，事故の発生件数が多い機種は乗用トラクタ（1045件），刈払機（476件），歩行用トラクタ（454件），自脱コンバイン（436件）となつている。このような事故件数が多い機種では，かねてより事故事例が多数報告されており，事故を防止するための研究が行われてきた。上記の機種の中でも，本報告では乗用トラクタ，自脱コンバインについて，第4次農業機械等緊急開発事業の下で開発された安全装置を紹介する。乗用トラクタについては片ブレーキ誤操作防止装置，自脱コンバインについては手こぎ時の緊急即時停止装置に関して.安全装置の詳細と普及状況を以下に述べる。また，上記JA共済連による調査結果は，本装置開発後のものであるが，農業機械による負傷も含めた事故の現状を，大規模なデータを基に分析している唯一の公表資料であることから，開発背景の説明にこの結果を使用した。