Agilent Intuvo 9000 GC/MSシステム～最高の分析生産性を実現するアジレント次世代GCテクノロジー

摘要

ガスクロマトグラフ（GC)は，高速液体クロマトダラフ（HPLC)と同じく，身近な分離分析装置である。分離分析は葉緑素の研究に端を発しており，ロシアの植物学者のミハイル·ツヴェットが色素の分離に成功する1903年の発表まで遡ることができる。これがクロマトグラフィーの誕生である。その後，クロマトグラフイーは優れた分離手法として利用され，発展している。ガスクロマトグラフィーは，1952年にノーベル化学賞を受賞したイギリスの化学者アーチャー·マーティンとリチャード·シングによって1940年代から研究が進められ，開発された。当時は充填剤を詰めたパックドカラムだが，1958年には早くも金属製キャピラリーカラム(Golay column)が開発されている。GC-MSの開発も同じように1950年代まで遡ることができる。当時の装置は大型であり研究用途で利用されていた。その後ガラスキャピラリーカラムが開発されたが，現在のように環境分析でキャピラリ ーGC-MSが普及するまでには時間を要した。1976年，ヒューレット·パッカード社(HP, 現アジレント·テクノロジー社)が世界初のGC用質量分析計の販売を開始し，1982年に汎用となる卓上型HP 5890 GC/5970 MSDが登場した。ヒューレット·パッカード社は1979年にフューズドシリカ製キャピラリーカラム（当時，特許取得）も開発している。キャピラリーGC-MSはその後，世界中で環境中化学物質の分析ツールとして，欠かせない装置のひとつとなった。日本では，1990年代の環境規制の分析方法としてキャピラリーGC-MSが採用され，それ以降，多成分一斉分析を行う標準的な分析機器となり，今では様々な環境試料の分析方法として幅広く利用されている。このようなGCやGC-MSの汎用性の高さは，装置感度だけではなく装置のセットアップやメンテナンスを簡便にできるよう装置技術が進化してきたことが要因の一つである。このような進化が大きくなるほど，分析ラボの稼働時間や生産性はますます向上すると思われる。本記事では，アジレントGCのこれまでの技術革新のヒストリーを紹介しながら，さらなる生産性向上を追求して開発された最新機種Agilent Intuvo 9000 GC(図1)の最新テクノロジーと汎用四重極質量分析計(MS)を検出器としたAgilent Intuvo 9000 GC/MSシステムの特長について紹介する。