圃場整備事業前後の二ホンァカガエルの卵塊数の比較

摘要

圃場整備事業（以下，「事業」）は，生産性の向上に寄与 する一方で，農村生態系に負の影響を与える側面がある. その影響の定量評価は今なお重要課題とされ，評価の際に は事業前も含めた生物生息量の経年変化のモニタリングデ ータが必要である.しかし，このようなモニタリングを実施した研究事例は魚類（西田ら，2011)や力エル類（長谷 川，1995)を対象とした数件しかなく，知見は不足してい る.実際，事業の影響は様々な生物種に及び，力エル類に ついては二ホンァカガエル7?anaゾの生息への影響が 指摘されている（長谷川，1995 ； Fujioka and Lane,1997).二ホンァカガエルは谷津を含めた平地や丘陵地に生息し (長谷川，1995;前田、松并，1999)，主に水田で繁殖する (前田、松井，1999).事業による本種への影響に関する既 往研究は，事業前後の比較（長谷川，1995)あるいは事業 実施地区一未実施地区間の比較（Fujioka and Lane,1997) のいずれか片方のみによる.事業による影響をより正確に 把握するには，事業前後と実施地区一未実施地区間の両方 を同時に比較することが重要であり，その視点からすれば 未だ事業による影響の把握は十分とは言えない.上記の両 方を同時に比較するには，事業地区外に比較対象を設けた 上で，複数年にわたる調査が必要である.