三河湾におけるサルボウの初期成長に及ぼす貧酸素の影响

摘要

口本の主たる内湾では贫酸素化が顕著であり，夏季の 高水温期を中心に底生生物群集の死亡が常態化している。 これらの底生生物のうち二枚貝類は，貧酸素環境下にお いて嫌気的代謝を行うことにより，酸素呼吸をせずにあ る程度の期間生存できることが知られている。しかし， 嫌気的代謝では，摂食を行うことなく，体内に蓄積され たダリコ一ゲン等をエネルギーとして消費することか ら"，死亡を回避できたとしても，成長速度の低下を引 き起こすことが予想される。したがって，貧酸素化が頻 発する海域では，貧酸素化は直接的に底生生物を死亡さ せるばかりでなく，底生生物の成長に影響している可能 性が高い。これまで，貧酸素化が底生生物に及ぼす影響 としては，底生生物の死亡により，現存量の低下および 種数の減少が観察されるという多くの報告例があるが(例えば，風呂田)，成長に及ぼす影響を調べた例は少 なく，そのほとhどは室内実験によるものである。