遺伝子クラスター化による物質生産戦略：枯草菌ゲノムを利用する戦術

摘要

産業上有用な化合物は天然原油から化学処理を経て大量に生産できるプラスチック、ディーゼルやガソリンなどの化合物や、医薬品に代表される小規模生産ながら複雑な化学構造をもつ物質まで多様である。化学処理ではなく微生物による生産でも、バイオエタノールや一部の医薬品についても大規模生産にこぎつけている例はある。微生物による物質生産は、石炭、原油、天然ガスなどの化石燃料依存から脱却する取り組みに合致するものである。環境への負荷軽減、エネルギー循環の観点からも、近未来的には原料としてバイオマスを利用した微生物による化合物生産が望ましく、開発が緊急の課題となっている。化合物の大規模生産には、それを（少量でも）生産できる微生物から出発し、培養条件の検討や遺伝的な変異導入操作などで生産プロセスの改良を経ることで達成される。所望の化合物ごとに最適の微生物が選択されることになるが、この伝統的な開発手法に加えて汎用性の高い微生物（モデル微生物と称される）の利用も研究されている。