低酸素環境を利用したスプリント卜レーニングについて

摘要

低酸素環境は呼吸循環機能を改善させ，全身持久力の向上に寄与する様々な適応をもたらすことから，これまで多くの持久的競技により，有用なトレーニング手段として用いられ，現場におけるトレー二ングのためのガイドラインも提案されている.しかし，近年になって，これらとは異なり，低酸素環境下のトレーニングによって，スプリント能力の改善が期待できることが指摘されるようになってきた.例えば，Weyandら（1999)は被験者に低酸素環境下（13%02)でトレッドミル·スプリント（15-180秒）を行わせたとき，正常酸素環境下（20.9%O2)と比較して，運動開始30秒以降は有意な酸素摂取量の低下が生じるが，疾走速度の有意な低下は運動開始後60秒まで生じないことを観察した.彼らは，最大下走時のエネルギーコストは低酸素環境下と正常酸素環境下で同様であつたことから，観察された疾走速度の維持は，低酸素による有酸素的エネルギー供給の低下が，無酸素的ェネルギー供給の増加（18%)によって補償された結果であることを示唆した.