海外展開の拡大と国内拠点の最適生産体制の構築で,国際競争力強化と収益改善を急ぐ

摘要

欧州の金融危機や中国景気の減速が顕在化する中で，2012年の鉄鋼業界は歴史的な超円高や国内外の市況低迷を受けた販価下落が響き，13年3月期の鉄鋼大手の業績は軒並み大幅減益に陥り，その厳しさを裏付ける結果となった．しかし，その後，政府の景気対策による円高修正，株高を背景に，国内においては建築·土木需要の好調と前年のエコカー補助金終了に伴う反動減で生産調整に入っていた自動車も年央から増産に·さらに，この内需増に加え円安による輸出採算も改善されて，この結果，鉄鋼大手中むに企業業績は軒並み改善してきた．今年度も，4月からの消費増税の反動減が自動車の国内販売などに影響が出ているものの，自動車とともに主力の建築·土木需要が震災復興や防災対策，さらには首都圏を中心とする都市再開物件の増加などが重なり，旺盛な需要動向が続いている．こうした中で，鉄鋼大手は，安定的な供給に万全を期すとともに，より一層の収益改善に注力している．鉄鋼大手の今年の動向を展望してみた．