深層崩壊（その1）--九州で発生した深層崩壊の事例--

摘要

山地斜面の風化土層や基盤岩が豪雨や地震で安定を失いすベり面に沿って移動する現象は,大きく地すべりと崩壊に分類される.さらに,崩壊は,崩壊深や崩壊土量などによって表層崩壊と深層崩壊に区分されることがある~(1)).深層崩壊に関しては,（社）砂防学会に「深層崩壊に関する基本事項に係る検討委員会」が設置され,深層崩壊の定義深層崩壊に関する今後の調査?研究の方向などが議論されている~(2)).その中で,地すベり?表層崩壊?深層崩壊の区分に関して,表1.1および表1.2のようにまとめられた.すなわち,地すべりは移動土塊?岩塊の動きが継続的あるいは断続的で移動速度が小さく,移動中に土塊?岩塊があまり攪乱されない.一方,崩壊は土塊?岩塊の動きが突発的で一過性であり,移動速度が大きく,移動中に土塊?岩塊が攪乱されて原形をとどめない.さらに,表層崩壊は移動土塊が表層の風化土層であり,どのような地質でも発生する.これに対して深層崩壊は移動土塊?岩塊が基盤岩を含み,特定の地質や地質構造の地域で発生する.我が国では特に四万十帯などの付加体で深層崩壊の発生頻度が高い.また,表層崩壊では樹木の根系による緊縛力が崩壊抑止効果を発揮するが,深層崩壊ではその効果は期待できない.すべり面の深さは,崩壊土砂量の大きさにも影響するため,深層崩壊の土砂量は大きくなる~(2)).