日本語でひく動物学名辞典

摘要

日本動物分類学会の会員をはじめ，様々な動物群における生物分類学の研究者にとって，新種を記載する，というのは一つの夢であり，目標ではないだろうか.フィールドで得た標本の中に，今までに見たことのない生物を発見し，「もしかしたら新種では？ ！」と胸を躍らせた経験のある研究者も多いだろう.あるいは数々の博物館を訪問し，収蔵庫に並ぶ標本を用いてデータをまとめ，分類学的再検討を行った結果，新種として識別できる個体群を見出す場合もあるだろう.そして新種や新属を命名する時には，必ず新学名を何にするか，何にちなhだ名にすべきか，形態，色彩，生態的特徴をあれこれ思案することだろう.命名とは，それが学名であれ，わが子やペットの名前であれ，地名，店名や商品名であれ，長く慣れ親しhでもらえるように，あるいは由来，所属が分かるようにと，頭をひねって考え出す行為である.名前には縁起を担いだり，将来を祝福する意味を持たせるなど，様々な要素と願いが込められている.このように，人間にとって，命名することは大切で意義のあるものである.だから，子供が生まれたら，幸せ名前辞典をめくって漢字や画数を調べて幸運を祈るのと同様に，分類学者は学名を命名するために，その専門書を深く参照すべきである.本書こそが，まさにその役を担う辞書である.