TGF-βシグナルによる血管発生調節と癌

摘要

腫瘍組織が増大するためには，酸素と栄養を供給するための腫瘍血管の新生が必須である．また腫瘍新生血管は癌細胞が血行性転移により遠隔組織へ広がる可能性を増大させる．TGF-βは多種の細胞において増殖抑制作用があることから癌の初期段階では抑制因子として働くが，一方で血管新生などを誘導することによって癌を悪性化させる作用を持つことが示されている．本稿では血管の発生?新生におけるTGF-βシグナルの役割を概説し，癌の治療や血管再生療法への応用への可能性を紹介する.