複雑系としての生命システムの論理：細胞状態の普遍統計則を中心にして

摘要

生命とは何かを理解をするうえでは，システムの細部まで網羅的に記述することよりも，細部の情報を切り落とし，それでも残る普遍的性質を抽出することが重要である．このような生命研究のあり方を議論したうえで，その例として，最近筆者らが理論と実験の両面から発見した，細胞内の遺伝子発現の分布そして細胞ごとのタンパク質の分子数ゆらぎの普遍統計則を紹介する．これらの普遍則が，細胞の再帰性·安定性·可塑性·進化に持つ意義，さらに構成的生物学の方向についても簡単に議論する．