漆の特性を生かした先人たちの創意工夫をあらためて学ぶ

摘要

漆は古くから用いられてきた天然塗料接着剤である． 漆の塗膜には独特の艶があり優雅で美しいことから，器物の装飾や華飾に用いられてきた． 日本や中国に生育しているウルシの木の樹液が漆液であり，日本で使用されている漆液の98 ～ 99％ は輸入品である． 最近では，石油などの化石資源に依存しないものづくり，天然材料の活用，自然のサイクルを見習ったものづ（りなど，いわゆるグリーンケミストリー 〔環境に優しい化学）に関連して漆の利用価値が見直されている． また漆液が酵素により重合を進める高分子化合物であるため，有機溶媒を含まない塗料として環境保護やエネルギーの有効利用に関係して重要な材料であると認識されてきた．