有明海の環境を良くするために 水産業ができること

摘要

かつて有明海は豊穣の海といわれ,とくに二枚貝の資源量と生産性は世界でも類をみないほどだった.その漁獲高は最大年間10万トン近くに達したが,現在は1/10以下にまで激減している.一方,ノリ養殖は年間400億円近くを生産し,地域を支える主要な産業に成長した.しかし,有明海の環境はこの数十年で劇的に悪化したことを否定する人はいないだろう.現在,多数の研究が大学,国や県の研究所で行われ,それらの原因の究明と対策が検討されている.科学的知見に基づいた記述は本特集に譲るが,貧酸素,潮流の低下,干拓,採砂,カキ礁の減少,赤潮,水質汚染,乱獲などがあげられる.要因は相互に関係していることが最も重要だと私は考える.よって,各要因を修復するだけでなく,漁業,環境,経済,社会との関係まで含めた多様な価値を共有し,管理を目指さなければ,有明海の生態系を回復させることは困難だと考える（図1).ここでは有明海と水産業について私見を述べたい.