沿岸魚仔魚の海から四万十川河口域への進入様式

摘要

河口域や内湾域は，その周辺沿岸海域のある魚類にとって極めて重要な成育場を形成する。これらの魚類は海域で産卵を行い，ふ化後それらの仔魚の一部が成育場となる河口域や内湾城へ進入（immigration）する。 四万十川河口域は，その浅所において多くの海産魚類の成育場となっていることが明らかにされている。これらの仔稚魚は種ごとに違った一定の体長および発育段階で浅所に出現する。 この進入および出入現象に関する研究は，米国ノースカロライナやカナダのケベック，オーストラリアでなされており，本邦では，久美浜湾，志々伎湾，仙台湾につながる万石浦および松川浦そして同じく仙台湾に流人する七北田川河口内にある蒲生ラグーンでそれぞれヒラメ，マダイとクロダイ，マコガレイおよびイシガレイについてなされ，最近では高知県浦ノ内湾で湾内を成育場とする仔魚を対象にその進入機構を明らかにした研究がなされている。 しかしながら，四万十川河口域では多くの海産魚類の成育揚が明らかにされているにもかかわらず，その進入様式は必ずしも明らかになっていない。 この進入様式が明らかにならねば，河口域の成育場としての意義は正確に把握できないといっていい。 そこで，それらを明らかにするために，夏季，四万十川河口の水道部（以下，河口部とする）において調査を行った。