現代イギリス地理教育の展開ー「ナショナル·カリキュラム地理」改訂を機転とした考察(志村喬著)

摘要

わが国では従来地理教育分野の研究は、いわゆるアカデミックな地理学領域と比較して「軽視」されて来た。これは最も会員数が多く権威のある日本地理学会とその学会誌において「地理教育」の領域に関わる会員数、発表や論文掲載がきわめて少数だったことによく現れている。誤解を恐れずにいえばアカデミックな研究者からは地理教育は「一段低い分野」とみなされた。これはわが国の地理学の大きな弱点となる。すなわち地理学を山に例えるなら「裾野=土台づくり」を軽視したのである。実際地理学を専攻した小中高教員は極端に少ない。「地理は苦手だ」「地理だけは教えたくない」という社会科教師が増えた。フイールドワーク·地形図·地図帳の指導に至ってはさらに敬遠されてきた。小中でこhな教員から「楽しくない地理」を学hだ生徒から、高校で地理を選択したり大学で地理を学ぼうという人は減少した。その結果、わが国地理学界全体が弱体化したのである。したがって地理教育の研究者（小中高教員や学校現場経験者）が、地理教育領域の論文で学位を取得する機会は、きわめて希であった。