基岩地質に基づく新たな地すべり分類の提案

摘要

地すべりと地質が密接な関係を持つことは日本各地で 知られている1)~5)。日本列島における地すべりは，主に 地震，豪雨，長雨および融雪時に，多様な地質環境を反 映して発生している。その中で，地すべり多発地帯は， 新第三系（新第三紀層）が分布するグリーンタフ地域（北 海道，東北，北陸および山陰の日本海側，フォッサマグ ナ地域など），古第三系（古第三紀層）および新第三系 が分布する炭田地域（北西九州，常磐や北海道など）， 中央構造線の南側に分布する三波川変成帯（和歌山県， 徳島県，愛媛県など），古生界（古生層）や中生界（中 生層）の分布する付加体地域，多様な地質環境で見られ る熱水変質帯（八幡平，鳴子，箱根，別府，霧島などの 温泉地帯など）などである。ここで，地すべりと密接な 地質構造は同斜構造（流れ盤），褶曲構造，特に背斜構 造の翼部（流れ盤）または背斜軸部や撓曲部6），キャッ プロック構造，断層など7）である。また，地すべりが発 生しやすい基岩の岩質は，古第三系や新第三系の軟岩や 硬岩8）（火砕岩や泥質岩など），古生界や中生界の硬岩（ス レート（粘板岩），千枚岩，泥質片岩，塩基性片岩など） やこれらの風化軟岩，膨潤性岩である蛇紋岩の主に硬岩， 熱水変質岩の主に軟岩9),10)などである。