2004年台風21号による豪雨で発生した宮川上流大杉峡谷での岩盤斜面崩壊

摘要

2004年台風21号は三重県中南部に短時間で多量の降雨をもたらし，一級河川宮川流域を中心に洪水土石流地すべり斜面崩壊が多発し，死傷者を伴う災害となった。これらについての記録研究はさまざまな観点からすすめられている。災害が主要な居住地のある宮川ダムより下流域で発生したことや，災害直後は林道などの寸断で調査が困難だったこともあり，上記の研究では宮川上流域までを十分カバーしていない。しかし，永田ほかで示されたように，ランドスライド（広義の地すべり）は上流域においても多数発生している。飯沼ほかは，空中写真判読によって，上流域大杉谷で発生したランドスライドとそれにともなう天然ダムの存在を予察的に報告しているが，大杉谷沿いの登山道は現在も閉鎖されており，現地での確認を困難にしていた。筆者らは，2006年11月および2008年5月に，許可を得て現地調査をおこなう機会を得たので，光滝下流における河道閉塞をともなう岩盤斜面崩壊（図-1）の調査結果について報告する。