個性が集合的最適意思決定をもたらす

摘要

生物には，3個体以上の複数個体が協力して生活を営む者が多数いる．中でも，ハチ，アリ，シロアリという昆虫は，女王という産卵に特化した少数の個体の周りに，労働に特化したワーカーという個体が多数おり，多数の個体からなる「コロニー」と呼ばれる社会を形成している．このように，繁殖に特化した個体と，コロニーのメンテナンスに特化した個体が存在する昆虫を真社会性昆虫と呼hでいる．大きな脳をもつ脊椎動物の集団などでは，1～数匹のリーダーがいて，群れの行動（＝集団的意思決定）は基本的にリーダーの判断によって決まる．人の会社組織などを見ればわかりやすいだろう．このシステムが有効に機能するのは，リーダーが状況を的確に判断し，適切な行動を選択することができるからこそである．しかし，微小な脳しかもたない昆虫では，高度な知的判断は最初から不可能である．