鉄道車両二輪一ユニット操舵台車のダイナミクスと制御

摘要

本稿では，はじめに鉄道車両の動向として，さらなる高速化や，LRTのような都市の急曲線に適応した車両が望まれる背景について述べた。 一世紀半という長きにわたる鉄道の歴史の中で，鉄道車両の輪軸は進化の最終段階とみなされてきた．しかしながら,狛立回転方式の車輪なども含め，改めて原理原則に基づいて考察すれば，必ずしも最適な構造とは限らないことを述べた．また，近年のアクティブ制御技術の成熟化を考慮すると，アクティブ制御に適合した制御対象として，台車や車輪構造をあらためて考える必要もある．このような観点から，二輪一ユニットという，鉄道車両の走行における最も基本的な要素にたちかえり，独立回転車輪をもちいた制御機能を有する台車を具体的に提案し，スケールモデルの曲線走行装置を活用した実験によって，有効性を検証した。 最後に，二輪一ユニットという観点から，アクティブ制御に適合するシステムを体系立てて述べてみた。 今回は，二輪一ユニットという形で的を絞った議論展開をおこなった．しかしながら，新たな車両システムの実用化を目指すには，単なる運動学的な有意性のみでなく，フェールセーフを含めた安全性，メンテナンス性も当然重要なファクターとなる。 また，車両の目的は人間や物の輸送であることから，人間の場合であれば物理的な振動·運動といった観点のみでなく，快適性という因子も重要である．以上のような，総合的知見によって，高い利便性をもった鉄道システムの構築が可能と考える。