生命科学と制御：《第1回》生命科学にとって制御とは何か－知の統合をめざして

摘要

今月から約1年間にわたって「生命科学と制御」と題するリレー解説を行うことになった．生物はその生命活動をさまざまな形の制御機構にゆだねている．そのような生物の行う制御が現代の生命科学の諸領域でどのように研究されており，それがさまざまな生命現象の解明にどのように役立っているか，をそれぞれの専門家に解説していただく．生命現象の解明からさらに一歩を進めて病気の治療やロボットの設計など実用的な成果に結びついた研究も語っていただけるものと思う．この連載は2つの意味で知の統合を目指している．ひとつは生命科学という広大な領域を制御の視点から俯瞰する新しい「生命知」の構築であり，もうひとつは生命科学と制御というまったく異なった考え方をもつ2つの分野の出会いから生れる新しいかたちの知の創成である．