支援的保護システム－Safety by Designによる包括的安全管理の必要性

摘要

近年，Connected IndustriesやSafety2.0など，Internet of Things (IoT)やInformation and Communication Technology (ICT)を産業現場に活用することで，あらたな価値を生み出そうとする流れが世界中に広まりつつある．一方で，昨今の産業現場の多くは「統合生産ンステム(Integrated Manufacturing System: IMS)」で構築されている．IMSとは，単体の機械を複合的に組み合わせた生産システムをいう．ここで働く作業員には，機械の複合環境を熟知した上で個別の機械で作業をすることが強いられる．これゆえに，IMS現場では清掃などの作業において経験の少ない作業者による労働災害が発生している．機械安全の国際規格であるISO 12100 (JIS B 9700)による安全確保のためのリスク低減方策は，本質的安全設計方策，安全防護および付加保護方策，使用上の情報提供からなる3ステップメソッドを原則としている．しかしながら，清掃作業など，現場には機械を停止させずに行う危険点近接作業（保守，点検，修理，清掃など）があるために，この原則のみではリスクを十分に低減できない場合がある．加えて，ISO11161「統合生産システム(IMS)における安全性」においても危険点近接作業における具体的な安全確保手段は提供されていない．このようにIMSでの労働災害防止は人の能力や注意力に依存する安全管理に頼らざるを得ないが，人の能力や注意力は災害防止対策としては不確定性が高いため，いったhヒューマン·エラーが生じると重篤な労働災害に繫がる可能性がある．以上の状況から，今日の生産現場の実情に合わせた具体的なリスク低減戦略を検討する必要がある．特に意図的な不安全行動やヒューマン·エラーの低減は対策の確定性を向上するための非常に重要なミッションといえる．