鋳鉄のきずと欠陥の境界：渦電流法による球状黒鉛鋳鉄中のセメンタイトの検出

摘要

本論文では，第1段階として渦電流を用いたセメンタイトの検出の可能性を調べた．基地組織が異なるように用意した階段状試験片8種類，実体鋳物から切り出した試験片10種類および薄肉試験片4種類を用いた．これらの球状黒鉛鋳鉄試験片について導電率，磁化曲線および渦電流評価を行い以下の結果を得た．1.フェライト地の鋳鉄に比べてパーライ地トおよびセメンタイトを含む鋳鉄の方が低い導電率を示す．2.フェライト，パーライト，セメンタイトの面積率の違いにより磁化曲線が変化し，セメンタイトを多く含有する鋳鉄ほど透磁率は減少する．3.セメンタイトを含まない試験片の渦電流信号の傾向とセメンタイトを含有する試験片の渦電流信号の傾向が異なる．これによりセメンタイトを含まない試験片の渦電流信号の近似直線からの渦電流信号の乖離を調べることでセメンタイトの有無を評価することが可能である．以上の結果より，渦電流評価を用いることで鋳造品中に含有するセメンタイトの検出を迅速かっ非破壊で行うことが可能である．