硫化物を分散させた鉛フリー青銅鋳物の合金元素量変動に伴う鋳造組織,機械的性質及び切削性

摘要

鉛は環境と人体に悪影響を及ぼすことから，世界的に厳しく規制されている．ことに欧州連合(EU)ではWEEE，RoHS，ELV指令などでPb，Hg，Cd，6価Cr，PBB（ポリ臭素化ビフェニル），PBDE（ポリ臭化ジフェニルエーテル）の6物質が厳しく規制されている．しかし，銅合金材料では鉛は4mass％までであれば適用除外となっているが「4年毎の見直しを実施する」としており，いずれ，現在の鉛量は見直されるはずである．鉛を青銅鋳物に添加すると，鋳造特性が改善され，切削性も向上する．我国では鉛の代替物としてBiあるいはBiとSeを添加した合金がJISで規格化されている．周知の通り，Bi，Seはレアメタル（希少金属）であり，資源の面から見ると，クラーク数順位はBi は67位，Seは70位であり，順位は低い．今後，銅合金材料で多量に使用すれば資源の枯渇が懸念される．さらに経済的には品薄になれば，これらのレアメタルは高騰することは間違いない．資源の枯渇を考えるならば，鉛の代替物を改めて考え直す必要がある．今までに，鉛の代替物として汎用元素である硫黄を採り上げ，青銅中に硫化物を分散させた合金の開発を行ってきた，そこで，硫化物を分散させた鉛フリー青銅鋳物の機械的性質，切削性，流動性及び耐圧性などについて調べた結果を報告する．