自動車トランスミッション用1.5Cr-0.2Mo焼結合金鋼歯車の曲げ疲労強度と衝撃強度

摘要

ところで，近年粉末焼結技術の進歩により7.5g/cm~3以上の密度をもつ閉気孔組織のP/M材が通常の1回圧縮1回焼結の工程により製造できるようになった．また，筆者らはこれまでの研究で，スウェーデンに所在するヘガネスAB社が開発した非常に高密度(ρ＝7.55g/cm~3)な1.5Cr-0.2Mo焼結合金鋼の浸炭焼入れしたP/M大歯車とSNCM420溶製合金鋼浸炭焼入れ小歯車の組み合わせで動力循環式歯車運転試験を行い，そのP/M歯車の面圧疲労限がヘルツの最大接触応力σ_Hで2.0 GPa以上あることを実証した．そこで本報ではさらに，この高い荷重負荷性能をもつP/M歯車に対してパルセータを用いた単一歯曲げ疲労試験を行い，素材そのものの曲げ強度および付加加工が曲げ強度におよぼす影響について調べた．また，実際使用される場面を想定した歯車形状での歯の衝撃折損試験も行い，衝撃強度を調べた．そして，それらを同じ諸元をもつ浸炭焼入れされたSCM415溶製合金鋼歯車の強度と比較することにより，このP/M材の自動車トランスミッション動力伝達用歯車材料としての適用可能性について検証した．