パイロメタラジーの新展開：P.S.転炉の高効率化と炉内反応

摘要

これまで述べてきたように，建設費，省力化といった装置面の比較では連続転炉に劣るP.S.転炉も，優れた冶金性能と転炉単独でみた時の安いランニングコスト，加えて秘められた可能性に対する魅力は大きい．また，精鉱の処理も行っているTeniente炉，精鉱から一気に粗銅まで仕上げようとしたNoranda炉にしても後工程にP.S.転炉を付帯しており，熔錬プロセスが大きく変わっても今後P.S.転炉の需要が大きく低下することは考えにくい．一方，海外でP.S.転炉を操業する場合，日本と比較して低い操業スキルに起因するところが大きいが，P.S.転炉が環境保全に好ましくないという認識が根強く存在しており，世界的に環境規制が厳しくなる中では，三菱C炉やFlash Converterに代表される連続転炉プロセスに寄せる関心は高い．いずれにしても，転炉を含めた製錬プロセスにはそれぞれ一長一短があり，製錬業態（山元製錬／買鉱製錬），原料の特性，導入の形態（新設／既設プロセスの変更），経済的条件（物価，エネルギー事情等），環境規制の程度，作業者のスキル，熔錬炉との組み合わせ，不純物除去技術等により最適なプロセスが決定されることになる．当社としては，P.S.転炉のポテンシャルをさらに引き出し，これと併行してより競争力のある製錬技術の開発を進めていく所存である．