交換バイアス反強磁性材料

摘要

交換磁気異方性あるいは一方向磁気異方性という言葉は，磁性を専門としない読者にはあまり馴染みがないかと思われる．そもそも磁気異方性とは強磁性材料の磁気モーメントが，材料のある方向に対しては向きやすいが，他の方向には向きにくいといった性質を表す．方位磁針が南北を指すことや永久磁石がその磁力を保持していることも，磁気モーメントが強磁性材料のある方向に留まろうとする性質ゆえであり，磁気異方性がその原因である．通常の強磁性材料では，磁気異方性の対称性は一軸以上，すなわち磁気モーメントが向きやすい方向（磁化容易方向）が二方向以上存在するが，強磁性材料と反強磁性材料を組み合わせた磁性材料では，磁化容易方向が一方向しか存在しない場合がある．この現象を称して一方向磁気異方性もしくは，その発生機構が強磁性材料と反強磁性材料間の交換結合に因ることから，交換磁気其方性と呼ぶ．