金属ガラスの構造

摘要

この解説では，Zr基金属ガラスとFe基金属ガラスという2種類の金属ガラスを取り上げ，それらの構造について説明した。 Zr基金属ガラスは金属元素のみで構成される金属ガラスであり，Fe基金属ガラスは金属元素と共にBという非金属元素を含む金属ガラスである。 したがって，局所構造単位も，金属元素が密に詰まった20面体的なクラスター構造を示すZr基金属ガラスに対して，Fe基金属ガラスでは三角プリズム構造を基本構造単位としている。 しかし，構造安定性の本質は，原子が密に詰まったクラスター構造の存在にあると考えられるようになってきた。 すなわち，Zr基金属ガラスの場合には，20面体クラスター構造そのものあるいはこれらがさらに集まって形成する構造であり，Fe基金属ガラスの場合には三角プリズムやアルキメデスの逆プリズムが密に詰まって形成される構造であると考えられる。 これらの詳細を議論するにはまだ至っていないが，現在様々な回折手法による測定とそれに基づくコンピューターによる構造シミュレーションによって明らかにするための研究が行われている。 このような原子が密に詰まったクラスター構造では，原子の再配列は容易ではなく，それらが結晶化を遅らせ，アモルファス構造を安定化していると現在考えている。 本稿では金属ガラスの構造解析の現状について解説した。 さらに詳細な実験結果については参考文献を参照していただきたい。