1000万人の材料科学－自動車編(16)：自動車用すべり軸受－脱Pb時代のエンジン軸受へ

摘要

エンジン軸受には，自動車技術の進歩と共に高性能，高機能化が要求され，かつ地球規模の環境問題から排気ガス改善，低燃費化などによるCO{sub}2削減やEUにおけるELV(End-of-Life Vehicle)指令によるPbなどの環境汚染物質の削減，全廃が強く求められている．こうした軸受への高面圧，低フリクション，長寿命，Pbフリーといった要求が以前より厳しいものになってきている様子を図1に示す．エンジン軸受は，ここ20年間で2倍近くの負荷能力増大が求められている．また，エンジン軸受に求められる高機能化は自動車内燃機関において発生するフリクションの低減にも直接貢献している．このように，エンジン軸受は自動車エンジンの急速な変革を受け止めエンジン性能を左右する一つの機能部品とも考えられるが，歴史的にはそれらの機能に応えるためにPbを最大限に有効活用してきた部材とも言える．従って，環境問題としてのPbフリー化に際しては，Pbの持つ機能をPbなしで再構築するためにすべり軸受に要求される機能の中でPbの果たしてきた役割を十分に検証し，総合的に進められねばならない．