テクノロジー·フィクション

摘要

博物学者のリンネがヒトの学名を「ホモ·サピエンス（理性人間）」としたのは18世紀の事である。 19世紀にはいるとドイツの哲学者マックス·シエラーが人間を「ホモ·ファーベル（工作人間）」と呼び，更に歴史家ホイジンガは1938年に「ホモ·ルーデンス（遊戯人間）」と言う定義を述べた。 この「理性-工作-遊戯」という人間の条件を基盤とする古典的人間像は，いま危機を迎えている。 言語-息考，道具-労働,遊び-ひらめき，といった三つの側面から人間が定義されるということは，私の考えではきわめて本質的なことであり，この三者の程よいバランスがヒトを人間らしくしている。 しかし現在では，思考は溢れる餃舌の中で溺れ,労働は記憶装置と制御装置を備えた自動機械に付属するものでしかなく，ひらめきは肥大化した映像によって麻痺している。