原子炉圧力容器の照射脆化－脆化予測法JEAC 4201-2007は誤っている

摘要

原子力発電炉の圧力容器は中性子照射を受けて脆化する．JEAC 4201は圧力容器用鋼材の監視試験および脆化予測に関する規格である．2007年に改定されたJEAC 4201-2007は，電力中央研究所の研究報告に基礎をおくもので，その予測式は“既存のデータ点をにらhで線を引ぐといった経験的手法ではなく“脆化機構論に立脚する予測手法”に基づくものであるという．その基本である反応速度式を検討したところ，致命的な誤りがあることが判明した．また，現象を律速する鋼中の銅原子の拡散速度として，およそ非現実的な値が用いられていることも明らかとなった．この規格を制定した日本電気協会原子力規格委員会は，筆者らの再三の指摘を無視してきており，JEAC 4201-2007は現在も原発の規制に用いられている．筆者らの電中研モデル批判に対して，著者及び周辺の研究者からは，“物理学を論じているのではなく工学だから”，“現象論だから”と弁解·擁護·容認する声が聴かれた．それらの声に耳を傾けるべき点はいささかでもあるのか？本論考はその点を明らかにすることを目的として，原論文を詳細に検討し問題点の所在を明示するために執筆したものである．