溶液を反応場とするプロセス制御と材料創製：水酸化鉄との共沈による水の浄化－シーラカンス的テクノロジーの役割

摘要

最近の原油価格の記録破りな上昇，原油生産の将来への不透明な見通し，需給のバランス以外に投機の対象となることによる価格の変動などのために，生産のエネルギーコストやガソリンの値段の大幅な上昇が工業生産の多方面に大きな影響を及ぼしている．また，樹脂類を始めとする石油化学製品の価格，輸送コストも大きな上昇を避けられず，生産，流通を圧迫している．さらに8月下旬にアメリカ·ニューオリンズを中心とするメキシコ湾地域を襲つたハリケーンによる石油生産設備の休止がアメリカにおけるガソリン価格の急騰の原因となり，これらを通して日本にも石油エネルギーの高値が波及して素材生産，流通におけるエネルギー問題はますます深刻化している．また，環境汚染の防止，健康な生活の維持に対する社会的な意識の高揚に伴って，工業製品やプロセスからの排出物に含まれているいわゆる有害物質の量に対する法的な規制が厳しくなっている．このような背景の下に，エネルギー消費の削減および有害物質の除去分離などの面から，素材製造プロセスの大きな変換を可能にする技術の再構築が必要な時期に来ている．長年にわたる素材製造活動のために，生産設備の更新を検討する時期に人つている部分もあり，天然由来の精鉱の鉱物組成の変化や使用済み素材等の二次資源の受け入れなどの処理原料の変化に対応する新技術の検討が必要になっている．素材の大量生産の技術は既に成熟しており，新しい研究，技術開発は展開しにくいという情況が続いてきている．この長い歴史を持つシーラカンス的テクノロジーともいえる領域が，新しい現象，反応の観察，解析に始まるプロセスの大幅改変や新しい原理に基づく開発の努力を必要とするようになっている．