第1回 鉄の技術史/転炉技術の変遷--上底吹き転炉に至るプロセス開発

摘要

上吹き転炉の安定期に，歴史の逆行に思えた底吹き転炉の開発は，撹拌という鋼浴の定量解析から，上底吹き転炉の開発に結びついた。 底吹き転炉の撹拌力と反応容器としての特長が活かされ，溶銑予備処理法へと進展する。 上底吹き法のガス種および混合ガスの選択により，同一炉で酸化，かつ還元も可能であることをISCOやP_（CO）という物理量からの推定や実測から可能七なった。 上底吹き転炉の開発は以上述べてきたように，汎用性の高い反応容器として現在主流の技術として活用されている。 二重管羽口を発明したSavardとLeeが引退し，底吹き転炉が世に認められたことを祝し， "International Symposium on Bath Smelting"が1992年カナダで開催された。 この主催者であった故Brimacombe教授は冒頭の挨拶で，『工業の進歩は連続的なものではない革新的な技術が発明されると，工業は大きく飛躍的に進歩する。 製鋼分野では，べッセマー転炉，上吹き転炉およびSavardとLeeが発明した底吹き転炉用の二重管羽ロが飛躍的な革新技術であった。 興味深いのは，Bessemer，上吹き転炉の先駆者DurrerそしてSavardとLeeのいずれもが鉄鋼業に従事していなかったことである』と述べている。