凝固シミュレーションとの出会い

摘要

私は1977年に修士課程を修了した後，直ちに北大金属工学科に助手として採用されました。私の指導教授であった金属の凝固の研究をされていた高橋忠義先生が私に与えた研究課題は「二重鋳込みプロセス」の伝熱過程の解析でした。 「二重鋳込み法」とは，鋳塊の凝固過程で芯部の未凝固溶湯を異種合金溶湯と置換することにより，複合材料を製造しようとする新鋳造プロセスです。 私は学生の時には主に過冷凝固に関する実験的研究を行っていたのですが，伝熱計算の勉強を始めました。 その結見凝固のように相変態を伴う伝熱過程では潜熱の発生により支配方程式が非線形となり，ステファン問題と呼ばれる解析解を求めるのが非常に困難な問題となること，そしてこのような問題を解くには，コンピュータによる数値計算が有効だということを知りました。そこで数値計算の勉強を始め, 文献を調べて当時日立製作所に居られた新山英輔先生（後に東北大学教授）が「鋳物」に書かれた凝固伝熱の数値計算に関する解説を見つけて読みました。 この解説は非常に分かり易く，私のように数学が得意ではない人間でもやれそうだと感じました。