新素材開発戦略 MOT講義（4）

摘要

企業の研究開発を日本経済および経済政策の観点で議論した数少ない著作のひとつに1985年に発刊された竹中平蔵氏のものがあります。 当時は，日米貿易摩擦が激化していた時代でした。 米国では技術進歩が鈍化しており，その原因は1970年代からの研究開発投資の停滞であると多くの論者から指摘されていました。 かたや，欧米諸国へのキャッチアップを一応果たした日本は，技術のフリーライダーであるとする諸外国の批判に応えるためにも研究開発の投資を活発化させ，自主開発の技術を持つ必要に迫られていました。 竹中氏は，将来の技術進歩の源泉（seeds）になるという点で研究開発投資は，経済の需要·供給サイドをつなぐ「連結環」であり，経済活力を支える主要因であると述べています。