新しい生体用β型チタン合金の大気中および擬似生体内環境中における尉撞摩耗特性

摘要

生体用として新しく設計したβ型チタン合金の実用可能性を検討するために,実際に人工股関節の骨頭材料として使用されているアルミナ（Al_2O_3）およびジルコニア（ZrO_2）を摩耗相手材として，大気中および擬似生体内環境中での設計合金および既存生体用合金の摩擦摩耗特性の比較·検討を行った。 また，それら合金の摩擦摩耗特性に及ぼす摩耗相手材および試験環境の影響を検討した結果，以下の結論を得た。 （1）摩耗相手材にアルミナ（Al_2O_3）を使用した場合,設計合金の摩耗量は，Ti－6Al-4V ELI，Ti-6Al-7NbならびにSUS 316Lの場合と比較して大きい値を示す。 また，Ti-29Nb－13Ta－4.6Zr,Ti－16Nb－13Ta-4Mo，Ti-29Nb－13Ta,Ti-29Nb－13Ta-4MoおよびTi－29Nb－13Ta-2Snの摩耗量は擬似生体内環境中でさらに増加する傾向を示したが，Ti-29Nb-13Ta-4.6Sn，Ti－29Nb-13Ta－6SnおよびTi-6Al-4ELIならびにSUS 316Lの摩耗重量減少量は擬似生体内環境中で減少する。 (2）摩耗相手材にジルコニア（ZrO_2）を使用した場合,設計合金の摩耗量は，Ti－6Al-4VELIおよびTi-6Al－7Nbの場合と比較してより小さい値を示す。 また，各合金の摩耗量は，擬似生体内環境中で著しく減少する。 （3）新しく設計したβ型チタン合金を人工股関節材料として使用する場合，組合わせる骨頭材料としてはジルコニア（ZrO_2）が最適であると考えられる。 （4）摩耗相手材にジルコニアを使用した場合，最も摩耗量の低い設計合金においても徴謂な摩耗粉粒子の生成が認められた。 設計合金のさらなる細胞適合性および耐摩耗性の向上のために表面改質技術の検討も必要である。 最後に本研究の一部は,平成11年度地域コンソーシアム研究開発事業（NEDO），平成11年度愛知学院大学大学院歯学研究科学術フロンティア推進事業，平成11年度文部省科学研究費補助金基盤研究（B）（1），平成11年度（財）軽金属奨学会教育資金，平成11年度（財）三菱財団自然科学研究助成，平成11年度（財）鉄鋼研究振興助成（B），平成10年度（財）東海財団研究助成ならびに平成9年度（財）スズキ財団科学研究助成の援助を受けて遂行されたことを記し，感謝申し上げる。