医薬·化粧品製造とナノテクノロジー：事故·事例に学ぶ医薬品製造の安全性対策

摘要

本稿で取り上げる事故や安全対策は，工場内で発生する労働災害のような人身事故を対象としたものではなく，医薬品の消費者サイドで発生する事故が対象である。 医薬品の場合，もし表示内容と異なった成分·分量や，微生物·細菌に汚染された製品が販売された場合，医薬品を使う側の消費者に重篤な事故を起こす危険性がある。 不特定多数の消費者に対し事故を防止するためにはどのような安全対策が必要であろうか？ これが本稿のテーマであるが，とくに医薬品を製造する側から機械メーカーに対する要望も念頭に置きながらこのテーマを論じたい。 医薬品は薬効をもった粉体を顆粒や錠剤にするいわゆる製剤操作によってつくられるが，この場合の造粒や打錠という操作は医薬品に限らず，化学工業など他産業でも広く行われている。というより，医薬品製剤におけるこれらの操作は，他の産業分野から導入されて発展してきたといった方が正確である。