究極の省エネルギー蒸留システム『SUPERHIDIC』

摘要

蒸留は技術が比較的成熟されていると考えられ，また他の分離単位操作と異なり多段化が極めて容易に行えることから，産業界でもっとも利用される分離単位操作である。一方で，熱エネルギー多消費であることが欠点で，省エネルギー化が常に求められる。また，通常の蒸留操作ではリボイラーの熱源として，温室効果ガス排出を伴うスチームや燃料ガス·燃料油を用いることから，地球温暖化問題にも大きな影響を及ぼしている。このためこの分野では，旧来から多くの省エネルギー技術が提案されてきた。それらは，塔内部品の低圧力損失化，多成分混合物をどのような順番で分離していくかというシーケンシング，蒸留塔のコンデンサーとリボイラーをそれぞれ与熱，受熱の熱交換器とみなし，ある蒸留塔のコンデンサーを他の蒸留塔のリボイラーの熱源として利用する多重効用，さらにヒートポンプ技術の適用などに分類することができる。近年，適用例が増えてきたDividing Wall Columnは，シーケンシングと多重効用を組み合わせた技術である。これらの中でも，風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーが急速に普及するなか，温室効果ガス排出削減への寄与を考えると，ヒートポンプ技術系による省エネルギー化が注目されるところである。