COMSOL Multiphysics による化学工学の輸送現象の解析

摘要

化学プラントでは配管内での化学種の反応と質量輸送，流体運動，熱移動を設計する必要がある。この分野を扱う化学工学では，反応工学，設計方程式，輸送理論というフレームワークで現象の解析やシミュレーションが行われる。反応工学および設計方程式では系の物理量の空間的な分布を広がりを考えない集中系として取り扱う。この方法では計算量を小規模に抑えることができる。空間分布を検討するには，質量，運動量およびエネルギーの保存則に基づく輸送理論によって現象解析を行う。この場合には計算規模は大きくなる。集中系および空間依存系におけるこれらの解析は，代数方程式，常微分方程式，偏微分方程式を扱う数値解析環境によって容易に取り組める段階にある。本稿では，配管輸送における化学反応流の計算原理，電気浸透流ポンプの原理，有限要素解析を利用した配管内の化学反応流やマイクロ流路内部の電気浸透流の数値的可視化，マイクロ流路の最適化の方法についてそれぞれ解説を行う。この分野におけるCOMSOL Multiphysicsによるモデリングの考え方についても解説を行う。