粉体化粧料の材料設計から加工プロセス開発まで 第5回 肌の弾力組織を保護する抗シワ化粧品と肌の水分蒸散速度測定法

摘要

化粧品の保湿効果は若々しい肌の維持に不可欠であると考えられている。表皮の下層にある真皮は，コラーゲンとエラスチンが形成する網状組織に保湿因子を保持することで水分を多量に含むゲル構造を形成し，肌に弾力や張りを与える。一方，網状組織が劣化するとゲル体積が収縮し保水量も低下するため弾力が損なわれ，表皮が陥没したり張りをなくした皮膚が自重で垂れ下がる。顔面にシワやタルミの陰影部が増大した加齢肌の印象を強めるのである。切餅に化粧品を塗布し水分蒸散作用を比較すると，保湿剤を配合した乳化型のファンデーションを塗布した場合は表層にくっきりとしたひび割れが生じ対照的にパウダー型の化粧品を塗布した場合は，ひび割れが目立たない場合がある（図1）。乳化品の保湿剤が餅の水分を吸収し蒸散することで，表層体積が収縮し大規模なひび割れが発生する。対照的に水分吸収作用が乏しいパウダー品はひび割れが少ない。すなわち，水分が減少したゲル状組織の不可逆的な体積収縮が，顔面のシワや餅面のひび割れの原因であることが分かる。