地球科学の窓 EARTH SCIENCE TODAY

摘要

幾何学的な彫刻の製作は現代的な認識力と行動を示すものとして一般に解釈されている.このょうな行動の起源に関する議論の鍵となる問題は.この革新が新人(Homo sapiens)に限定されるのかどうかと,それが唯一アフリ力だけに起源をもっのかどうかということである.筆者らは,1891年にゥジェ一ヌ?デュボワにょって発見された原人 Homo erectusの模式地であるインドネシアのジャワ島トリニ一ルの“主要な骨化石密集層"から産出した淡水棲貝化石群集にっいて報告する.オランダのライデン国立自然史博物館所蔵のデュボワ?コレクションに,筆者らはヒト亜科にょる淡水貝の摂食,明瞭な貝殻の道具,おょび幾何学的彫刻がなされた貝殻の証拠を発見した.筆者らはアルゴン-アルゴン(~(40)Ar/~(39)Ar)法とルミネッセンス年代測定法で貝殻中に含まれた堆積物の年代を測定し、最大で54 ±10万年前,最小で43 ±5万年前という年代を得た.このことは,トリニ一ルの"主要な骨化石密集層”が従来推定されていたょりも新しいことを示す.それとともに,筆者らのデ一タは.この彫刻が原人 Homo erectusにょって作られ,それがこれまで記載された最古の幾何学的彫刻ょりもかなり古いことを示す.彫刻された貝殻の機能や意味を評価することは現在では不可能ではあるが,この発見は抽象的模様を彫刻することにまで,アジアの原人Homo erectusの認識力と神経運動制御が及hでいたことを示唆する.