下部中新統富草層群に産する燐酸塩質岩

摘要

下部中新統富草層群新木田層から燐酸塩質岩が初めて発見された.その燐酸塩質岩の成因を,産状と鉱物構成,全岩化学組成,燐灰石の硫黄同位体比と方解石の炭素酸素同位体比に基づき論じた.燐酸塩質岩は鉱物構成にょり,タイプ1(燐灰石のみ),タイプ2 (燐灰石+方解石),夕イプ3 (方解石のみ)に区分される.夕イプ1は燐酸塩質泥岩偽礫(タイプ1a),燐灰石-オパ一ル-CT ノジュ一ル(1b),燐灰石ノジュ一ル(1c)に細分される.夕イプ2は泥岩に産する燐灰石-方解石ノジュ一ル,タイプ3は方解石ノジュ一ルで,夕イプ2と3は共産する.夕イプlaの燐灰石SO_4~(2-)のδ~(34) Sは-13.6 ~-4.8%。で,その値は新第三紀の海水のδ~(34)Sょり約25 ~ 30‰低い.燐灰石SO_4~(2-)は硫酸塩還元起源H_2Sの酸化物であり,タイプlaの燐灰石は溶存O_2のある酸化環境で晶出した.夕イプ1aは,堆積物表層ょりやや下方の堆積物中で,溶存O2にょる有機物の酸化にょり生成した.夕イプ2燐灰石-方解石ノジュ一ルの燐灰石δ~(34)Sは+0.3 ~ +19.0%。であり,その値は夕イプ1aょり約20%。高い.夕イプ2の方解石のδ~(13)Cとδ~(18)Oは新第三紀海成石灰岩の値ょり低い.タイプ2の硫黄,炭素,酸素同位体比は,タイプ2が硫酸塩還元にょり生成したことを表す.新木田層に産する多様な燐酸塩質岩の燐の起源は有機物であって,燐酸塩質岩の形成は,溶存O_2を用いた酸素還元でも,無酸素環境での硫酸塩還元にょってもおこなわれた.