古くて新しい炭素の新展開：ホウ素ドープダイヤモンドの超伝導

摘要

炭素ほど，単体で様々な結晶構造を持つものは，ないのではなかろうか。 ダイヤモンドは，炭素から作られる物質の代表といって過言ではなかろう。 SP{sup}3の共有結合を持ち，三次元的な結晶構造を持つ。 それに対して，SP{sup}2的結合を持ち，二次元的な結晶構造を持つのが，グラファイトである。 両極端に位置するダイヤモンドとグラファイトであるが，両者ともキャリアードープすることによって超伝導を示すことが最近明らかになった。さて，炭素から作られる物質は他にもある。 C{sub}60を代表とするフラーレンやナノチューブである。 これらは，次元的にみて，ダイヤモンドとグラファイトの間に位置しているといえよう。 C{sub}60は30Kを上回る超伝導を示すことが知られている。炭素系の中では，もっとも高い超伝導転移温度である。 さて，ナノチューブは，これまでにいくつか超伝導の報告があるが，まだ確固たる証拠が得られていない。 ナノチューブには巻き方や太さをはじめ様々な種類があるため，研究を困難にしているといえよう。 しかし，私は個人的には，何らかの構造のナノチューブは超伝導になりうると期待している。細ければ一次元的になるため，おもしろい物理が潜hでいるかもしれない。 様々な構造を示す炭素系化合物は，超伝導研究者にとっても，大変興味深い物質群といえよう。