マグマ性熱水鉱床における金·銅の起源と化学的挙動に関する最近の研究

摘要

熱水性金属鉱床の成因論の構築は鉱石を構成する主要元素の起源，運搬および沈殿といった一連の過程を明らかにすることによって達成される。 こうした見地に立てば，陸成の熱水性鉱床の中では斑岩型銅·金鉱床および浅熱水性金鉱床が近年最も成因論の進展を遂げた研究分野であると言えるであろう．斑岩型鉱床を構成する親銅·親鉄性金属元素がマグマ起源であることは衆目の．一致するところであり，それを支持する地球化学的データは多数存在する（例えば，Hedenquist and Lowenstern，1994；Bodnar，1995；Rusketal.，2004）．一方，浅熱水性鉱床の場合，例えばアンデス山脈地帯に分布する同規模の高硫化型浅熱水性金鉱床が中新世前期に生じたコルデイレラ造山活動以前，以後双方で生成されていることから，同型鉱床の主要構成元素である金·銅は地殻物質起源ではなく，より深部のマグマに由来すると考えられる様になった（Sillitoe，1991）．そして大陸緑，島弧を問わず，収束プレート境界部では高温の斑岩型鉱床と浅熱水性金鉱床が密接に伴って出現することが知られる様になってから（Hedenquistetal．，1998；Jensen and Barton，2000；Muntean and Einaudi，2001），両タイプの鉱床の成因的関連性がとりわけ注目されるに到った.最近，こうした問題に関する地球化学的研究が精力的に行われ，多くの新しい知見が提示された．それらは以下の3つのタイプの研究に集約される．