うつ病モデル作成のため基礎研究者が臨床医に望むこと

摘要

強制水泳試験は，抗うつ薬の薬効スクリーニングとして優れており，杭うつ薬の薬効相関モデルとして定着している.しかし，現時点ですべての妥当性を満足するうつ病の動物モデルは存在しない.その理由は，抑うつ気分のように言語を介してしか知り得ない症状を動物で再現できないことだけではなく，うつ病の個々の症状を個別に捉えた場合，疾患特異性が乏しいことにある.さらに，うつ病の確立された生物学的マーカーが乏しいことが挙げられる.うつ病の病態解明のためには，個体側要因と環境要因の両方を考慮した慢性ストレスモデルが必要である.脳機能画像，遺伝子多型などで，うつ病の生物学的マーカーについて新たな情報が得られた場合，動物モデルでの検討を試みるべきである.単一の動物モデルでうつ病のすべての症状·病態を再現するのは不可能であり，うつ病の症状·病態の一部を再現したモデルを複数組み合わせて研究を進めるべきである.