医療訴訟事例から学ぶ（65) 一診察した当直医が非専門医である場合に，専門医と同等の 診断をすることは困難である等として，過失を否定した事例一

摘要

患者A (42歳男性）は平成17年11月8日15時こ ろ，食道·胃の痛み，胃のむかつき，気分の不快感を 覚えて勤務先を早退し，17時50分ころ，独歩にてB 病院を受診した.Aは看護師に，喉から胸にかけて 痛みがあり，ほ時頃から現在も続いていると述べた. 同日の当直医で消化器を中心とした一般内科を専門と する当直医CがAを診察した.Aは，胸部痛の有無 を尋ねられた際，「特に今は感じない.気のせいかも しれない.」と答えた.また，既往症について，「うつ 病と高血圧の薬を飲hでいる」と述べた.C医師は聴診をしたが，異常音は聴取せず，更に心 疾患の有無を鑑別するために，同日18時7分ころ心 電図検査を実施したが，ST上昇は認めず，自動解析 結果の判定は，「-（正常範囲）」，解析結果は「異常な し」であった.C医師は，自覚症状が胸の不快感であり，心電図に 異常が認められなかったこと，心疾患に典型的な胸痛 を訴えず，その表情,所作等もなかったことなどから， 心疾患ではなく逆流性食道炎の疑いがあるとして，ガ スターDを処方した.