小児伝染性膿痴疹における治療薬の検討 分離された黄色ブドウ球菌（Staphylococcus aureus）の薬剤感受性および治療薬の感受性と臨床効果との相関

摘要

伝染性膿痂疹の児を対象に，Staphylococcus aureusに占めるMRSA（methicillin－resistant Staphylococcus aureus）の分離頻度調査，およびS.aureusの各種抗菌薬に対する薬剤感受性調査を行った占 また，初期治療薬の臨床効果判定が可能であづた症例における原因菌の薬剤感受性と臨床効果との相関性について評価した。対象となった症例は51例で，男女の内訳は22：29，平均年齢（±S．D．）は2．7（±2．2）歳であった。 検出されたS.aureus54殊に占めるMRSAの割合は22．2％（12株）であった。 MSSA（methicillin－susceptible StaphyIococcus aureus）42株の薬剤感受性は経口セフェム系薬の中ではcefdinir（CFDN）が最も良好で，MRSAでは，抗MRSA薬およびminocycline （MINO），norfloxacin（NFLX），sulfamethoxazole－trimethoprim（ST剤）が良好であった。 検出されたS.aureusの初期治療薬に対する薬剤感受性と臨床効果はほぼ相関していたが，強い掻痒感を伴うアトピー性皮膚炎合併例やブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群（staphylococcal scalded skin syndrome：SSSS）においては，薬剤感受性の結果が良好であっても，期待した臨床効果が認められなかった。 一方，MRSA検出例において，薬剤感受性の結果からは効果の期待できない治療薬でも改善している症例が存在していた。 以上の結果より，近年MRSAが問題視されてはいるが，いまだ原因菌の7～8割がMSSAであり，かつMRSA検出例でも薬剤感受性の結果では無効と思われる治療薬でも、改善する症例があること，また，MRSAに対し抗菌力の優れる薬剤の汎用による新たな耐性菌出現の可能性などを考慮すると，伝染性膿痴疹における治療薬は，MSSAに対する抗菌力の強い薬剤を第一選択に考え，CFDNを代表とした経口セフェム系薬で初期治療を開始し，3～4日後に改善がなければ，原因菌の薬剤感受性結果を確認したうえで（培養が未施行であればMRSAを考慮し），MINO，NFLX，ST剤等の治療薬に変更するのが妥当ではないかと考えられた。